どうしようもない名盤選
いま、ロックの名盤をリスト化する作業をしているのだけど、そのなかから、もうとりわけ異常なほど最高の名盤ばかり集めてみた。これは、ロックというものをあまり聞いたことがない人むけのもので、とりあえずこれだけは最低限聞いておけ、というリストなわけ。もしこれらのどれもにぜんぜん感動しない人っていうのは、どんな人なのか会ってみたい気もしないこともないが、まあ感動ということをすることがない人なのだと思われる。あなたは音楽を聞いてぼろぼろと文字通りとめどのない涙をこぼしたことがありますか。
これらのアルバムがすごいのは、40年前の作品であったとしても、いまでもまったく新鮮で、衝撃的だったりすることで、当時そのアルバムが人々にあたえたであろう感動を色あせさせずに伝えてくれる。そしてさらに驚くべきことに、一生聞いても飽きないアルバムたちだということだ。たとえば、オペラのカルメンを何度観ても飽きるということがないように、これらのアルバムは永遠の価値を持っている。これらの作品は間違いなく、ブランデンブルク協奏曲が400年後も聞き続けられているだろうことと同じように、やはり400年後にも聞き続けられているに違いない。
Bob Dylan, Highway 61 Revisited, 1965
The Rolling Stones, Beggars Banquet, 1968
Van Morrison, Astral Weeks. 1968
The Beatles, Abbey Road, 1969
King Crimson, In The Court Of The Crimson King, 1969
Joni Mitchell, Blue, 1971
Marvin Gaye, What's Going On, 1971
Bruce Springsteen, The Wild, the Innocent & the E Street
Shuffle, 1973
Neil Young & 'Crazy Horse', Live Rust, 1979
U2, The Joshua Tree, 1987
Sonic Youth, Daydream Nation, 1988
Nirvana, Nevermind, 1991
Nine Inch Nails, The Downward Spiral, 1994
ブロティッシュ・ロック
The Rolling Stones, Aftermath, 1966
The Kinks, Face to Face, 1966
The Who, Live at Leeds, 1970
サイケデリックロック
Pink Floyd, The Piper at the Gates of Dawn, 1967
Jefferson Airplane, Surrealistic Pillow, 1967
THE GRATEFUL DEAD
13th Floor Elevators, Easter Everywhere, 1967
フォークロック
Love, Forever Changes, 1967
Jethro Tull, Thick as a Brick, 1972/4
Fairport Convention, Liege & Lief, 1969
ブルーズロック
The Paul Butterfield Blues Band, East-West, 1966
Fleetwood Mac, Fleetwood Mac, 1975
FREE
THE FACES
プログレッシブロック
KING CRIMSON
EMERSON, LAKE & PALMER
PINK FLOYD
カントリーロック
The Byrds, Sweetheart of the Rodeo, 1968
Gram Parsons, G.P., 1972, Grievous Angel, 1973
サザンロック
CREEDENCE CLEARWATER REVIVAL, Green River, 1969
THE ALLMAN BROTHERS BAND
DEREK & THE DOMINOS
ハードロック
BLACK SABBATH
AEROSMITH
グラムロック
T.REX
David Bowie
ROXY MUSIC
ニューヨーク
Patti Smith
TALKING HEADS
THE RAMONES
HEARTBREAKERS
パンク
SEX PISTOLS
THE CLASH
Jeff Beck
トラフィック when the eagle flies
スティーヴ ウィンウッド スティーヴ ウィンウッド
リトルフィート ディキシーチキン
タジマハール シング ア ハッピーソング(ワーナー録音時代コンプリート)
カーティス メイフィールド there is no place like america today
マーヴィン ゲイ what's goin' on
ジョン リー フッカー ブルースの巨人 キング録音時代の編集盤
ビリー ホリデイ レディ デイ
アルセニオ ロドリゲス カフェルーゾのアマリアロドリゲス
『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』を見て強い不満を覚えたのだが、なぜだろうか、という問いかけからはじめたい。あの映画の、というかあのノイズ映画のノイズの使い方は、前衛芸術としてノイズを利用するものではなく、音の追求の一つとしてノイズを使っていて、それはそれでよい。しかし、あのノイズというのは、1960年代のノイズからそう変わっていないのではないだろうか。はっきり言うと、誰がやっても似たようなものになるノイズではないのか、ということだ。そしてノイズに関して、私がはっきりとした好みを持っていることにも気づかされた。
実を言うと、あの映画のノイズに対するイメージというのは単純そのもので、とくに最後のノイズにまみれて失神するというのはあまりに凡庸だ。今日のノイズはそのようなものではない。プライマル・スクリームの一貫としてのノイズではもはやないのだ。もっと日常的で、もっと変凡なものなのだ。それは日常的にラジオから流れてきたり、町中で流れていたりする、そんなノイズになっていくはずだ。眠るときにノイズ、そういうノイズの使われ方のノイズが主流になるはずだ。ノイズは不快なものでもないし、音楽からの逸脱でもない。それは単に音であり、音楽を包摂するものでさえあるはずだ。そしてそんな形のノイズは、じつはすでに広く使われている。
Nine Inch Nailsの最近のインストアルバムであるGhosts
I-IVを聞いてみようではないか。じつに心地よいノイズにまみれていることがすぐに確認できるだろう。インストだからノイズを使っているわけではなく、歌の入った楽曲でも同じサウンド作りをしている。この傾向は90年代グランジからのロックの基本的な傾向で、RadioheadでもFoo
Fightersでもなんでもそうだ。直接的な源泉はSonic
Youthあたりにあって、ギターノイズのこうした使い方を広めたサーストン・ムーアの功績は計り知れない。ムーアに直接影響を与えたのはおそらくニール・ヤングで、80年代のWeld以前に、70年代からすでにノイズを重視した音作りをしている。そして彼の爆音的ノイズギターに影響を与えたのは言うまでもなくジミ・ヘンドリックスである。
ここにきて、彼のギターに対するアプローチが従来考えられてきたものとは全然違うものだったことがより明確になってきたのではないだろうか。彼にとってギターは、ほかのギタリストがそうであったように、リフを弾くものではなく、音を作るものだったわけだ。彼を三代ギタリストと一緒に並べたりするのはまったくナンセンスだし、彼の生み出したフレーズだけを取り出して偉大だなどというのもまったく勘違いである。そして、彼の意図を本当に理解したのはニール・ヤングだったというのもほとんど理解されてこなかったわけだ。当時、ジミヘンだけがハウリングを重視した音作りをした。ギターをたたき壊したのも単なるパフォーマンスではなかったわけだ。実際、彼の音は、当時のロックシーンにおいては完全に孤立しており、孤高のものだった。ロック史における彼の扱いは「天才」というものであったが、その扱いにはみな困り果てていた。だが、いまやギターノイズの偉大な開拓者として正当に評価されるときがやってきたと言えるだろう。
さて、現在のギターノイズは爆音ではなく、より穏やかなものだ。それはエレキ・ギターにとってノイジーであることがデフォルトになっているかのようなノイズである。エレキ・ギターは音を出すと共に、ノイズを出す。これほどノイズと相性のよい楽器もほかにないだろう。このギター・ノイズの開拓によって90年代以降のロックシーンは一新したと言ってもよい。もはやリフを追求することはないがゆえにメタルは終焉した。明快な演奏がサウンドを作りあげるものではなく、より曖昧なものになるからである。アンビエント・ミュージックに近づいていくわけだ。
歌について
何というか……、歌ってなんだろうね。ほら、歌なんてあふれているし、カラオケでもめっちゃうまいひとの聞いたら感動するし、そりゃあプロが目の前で歌っていたらもっと感動するよね。あのね、むかし日曜日にNHKがやっているのど自慢聞いていてね、みんな素人だけどけっこううまい人もいるのね、あれ。でも、画面見ていなくて素人が歌い終わったことに気づかなかったんだけど、画面見ていなくてもこりゃあすげえな、って思った歌声が流れてきたのね。素人でこんなに上手い人がいるのかよって。んなわけはなくて、プロだったんだよね、それ。ゲストのね。そんとき、ああ、さすがに素人とプロとでは次元が違うなあってしみじみ思いました。やはりプロは歌にかける情熱からしてぜんぜん違う。歌と自分しかない、そんな境地に至れる人たちなんだなあって思ったんです。それはもうどんな歌が上手い素人と比べても違う。あ、プロを目指している素人は別だと思うよ。
んで、ぼくが聞いているミュージシャンたちの歌っていうのは、なんかそれよりもっとすごいものなんだなあ、ということを思い知ることがままあります。たとえば、トータス松本なんかはけっこういい歌い手で、珍しくR&Bなんか歌う人だけれども、これをヴァン・モリソンと比べてみると……それはなんかもうぜんぜん別物なんです。ほかには、たとえば宇多田ヒカルなんかはそれほど悪くない歌手だと思うけれど、彼女がU2のウィズ・オア・ウィズアウト・ユーを歌うのと、BONOが歌うのを比べてみると……
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2938439←宇多田バージョン
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2732661←BONOバージョン
これ……つうか、BONOすごすぎだよね。あのね、べつに日本のミュージシャンたちをけなしたいわけじゃあないのよ。彼らはそれなりによいと思う。でも、BONOやヴァンは……なんか別次元なんだよね。彼らの最良の瞬間は、もうほとんど神なんだよね。ピンとこない人はジョニー・キャッシュのこれでも聞きなさい。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm270021
ええと……歌って……これだけのものだったのか、と思っちゃいますね。そうでしょう。そうですね。なんなんでしょうか、これ。