柄谷行人 (1941−)
「かつて、知的関心をもつ若者が必ず小林秀雄を読んだ時代があり、(今となっては信じがたいことだが)吉本隆明を読んだ時代があったという。七十年代半ば以降そのような地位を占めているのが、ほかならぬ柄谷行人である。」とは、浅田彰の弁だが、これ以上的確な柄谷の紹介の仕方をほかに思いつけない。
文芸評論家から、思想家への転向をつげた決定的な作品は『内省と遡行』である。これは、思考による劇的なドラマといった観を呈しており、代表作である『探求』よりも刺激的かもしれない。90年代に入ってから季刊雑誌『批評空間』(太田出版)を浅田彰とともに編集しており、知的言説空間への貢献をはかっている。多少口が悪いのが欠点だが、若い批評家(山城むつみ、東浩紀など)にも多大な影響を与え続けている。雑誌に連載されたまま本になっていない作品も多数あるが、ここでは、本として出版された著作のリストを並べた。
評論・批評
『畏怖する人間』、冬樹社、72(講談社文芸文庫90)
『意味という病』、河出書房新社、75(講談社文芸文庫89)
『マルクスその可能性の中心』、講談社78(講談社学術文庫90)
『反文学論』、冬樹社、79(講談社学術文庫91)
『日本近代文学の起源』、講談社、80(講談社文芸文庫88)
『隠喩としての建築』、講談社、83(講談社学術文庫89)
『思考のパラドックス』、第三文明社、84
『批評とポスト・モダン』、福武書店、85(福武文庫89)
『内省と遡行』、講談社、85(講談社88)
『探究1』、講談社、86(講談社学術文庫92)
『言葉と悲劇』、第三文明社、89(講談社学術文庫93)
『探究2』、講談社、89(講談社学術文庫94)
『終焉をめぐって』、福武書店、90(講談社学術文庫95)
『漱石論集成』、第三文明社、92
『ヒューモアとしての唯物論』、筑摩書房、93(講談社文芸文庫版99)
『〈戦前〉の思考』、文芸春秋、94
『漱石をよむ』、岩波書店; 94
『坂口安吾と中上健次』、太田出版(批評空間叢書9)、96(第七回伊藤整文学賞受賞)
『差異としての場所』、講談社学術文庫、96(『暗喩としての建築』『批評とポスト・モダン』から合成)
『皆殺し文芸批評』、四谷ラウンド、98
対談・共著
『ダイアローグ1』、冬樹社、79(第三文明社87)
『小林秀雄をこえて』、河出書房新社、79
『ポスト・モダニズム批判』、作品社、85
『ダイアローグ3』、第三文明社、87
共著『闘争のエチカ』、蓮實重彦との対話、河出書房新社、88(河出文庫94)
『終わりなき世界』、岩井克人との対話、太田出版、1990年。
『ダイアローグ2』、第三文明社、90
『ダイアローグ4』、第三文明社、91
『シンポジウム1』、太田出版、94(批評空間叢書1)(思潮社89の再版)
『シンポジウム2』、太田出版、97(批評空間叢書13)
『近代日本の批評1(昭和篇上)』、福武書店、91(講談社文芸文庫97)
『近代日本の批評2(昭和篇下)』、福武書店、91(講談社文芸文庫97)
『近代日本の批評3(明治・大正篇)』、福武書店、92(講談社文芸文庫98)
『シンポジウム3』、太田出版、98(批評空間叢書16)
『ダイアローグ5』、第三文明社、98
共著『創造された古典』、ハルオ・シラネ・鈴木登美編、新曜社、99
『マルクスの現在』、とっても便利出版部、99
その他
『中上健次(群像日本の作家24)』、小学館、96
『中上健次発言集成1』、第三文明社、95
『中上健次発言集成2』、第三文明社、95
『中上健次発言集成3』、第三文明社、96
『中上健次発言集成4』、第三文明社、97
『中上健次発言集成5』、第三文明社、96
リンク
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